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噴火した火山の如く煮えたぎった感情を持って私のところへやってきた男があった。
どこかで見たことがあるような容姿をした男であった。
Fを手にした後、彼女は自身に付き合っている男がいると白状した。酔いはすでに冷めていた。
冷静さを乱しながらも気づかれぬように柔らかくその男のことを訊き出した。Fは大切な本を捲るようにして男のことを語った。
驚いていた。
Fの語った男というのはまるで私のようであったからだ。趣味から雰囲気から性格から私によく似ていた。
だからこそFは私に気を許し、このような状況にまで落ち込んでしまった。納得しかねるが、正当な理由と言えなくもなかった。
であるならば男は私を殺しに来るだろうか。
なにせ男は私とよく似ている。私がFを手に入れたとすれば憤慨し始末しようとするかもしれない。
Fは今回のことを反省し、男に全てを告白するという。私を選ぶか、もしくはそのまま男が許すのであれば元の鞘へと帰るのか、決めるというのだ。
反対はしなかった。
結果として私はこうして大学の本来は閉ざされた第二棟の屋上にて、素行の良くない上級生より授かった合い鍵を手にして立っていた。
男の呼び出しに応じ、場所は私が指定した。
なぜこの場所を選んだのかはわからなかった。ただ言えることは運命的なイメージが私の想像に邪魔をしてきたからであった。ここ以外はありえない。
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