第1章

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先輩は周囲をちらちらと気にしながら、お菓子の材料とお菓子づくりの本を素早くカゴに入れた。そのまま足早にレジに向かう。おそらく、学校でのキリッとしたイメージとは違うため、知り合いに見られるのが恥ずかしかったのだろう。榊原先輩にそんな可愛い一面があると知ったら、先輩のファンは悶絶するに違いない。自分だけが先輩の秘密を知っているのだという優越感に浸っていると、先輩が店を出たので、私も慌てて後を追う。 それから先輩は、ケーキ屋のマフィンをじっと見つめたり、ゲームセンターのケースに陳列されているぬいぐるみを眺めたりしながら駅に向かった。先輩は甘いものと可愛いものが好きで、電車通学ということがわかった。私は電車ではないので、名残惜しさを感じつつそこでお別れすることにした。 ところが後日、この尾行を続けるうちに、おそらく見てはいけないーー少なくとも先輩は絶対に人に見られたくはないであろう光景を、私は目撃してしまうことになる。
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