第1章

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私はそれからも先輩の尾行を続けた。先輩が気づいている様子はまったくなかった。いつも周りに誰かしらを引き連れている先輩だけど、たまに1人になる瞬間があった。よくよく見ていると、先輩はわざと群れから逃げているように見えた。人気者だって、たまにはひとりになりたいときもあるのだろう。 そういうとき、先輩は駅前のコーヒー豆の匂いがする食料品店に立ち寄り、お菓子の材料を買った。清水先生にあげるときもあれば、あげないときもあった。あげないときはどうするのだろう。練習して、家族にあげるのかもしれない。 私には知り得ない先輩の家での様子を想像して、ふふふっと微笑む。我ながら、これはちょっと気持ち悪いな、と思った。
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