第1章

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7月にはいり、梅雨が終盤に差し掛かっていた。連日雨が続き、期末テストが終わったその日、私はまた、とんでもない光景を目にしてしまう。 「先生のことが、好きです」 榊原先輩は、瞳を潤ませてそう言った。 私はびっくりして、足元の消化器に引っかかって、またしても転びそうになった。カタンと小さな音がしたけれど、でも、2人には届いていないようだった。 清水先生もまたびっくりしていた。先輩の気持ちにまるで気づいていなかった様子だ。どれだけ鈍感なんだ。 ひとしきりうろたえた後、清水先生は困ったように頭をかいて言った。 「生徒をそういう風には見れないよ。ごめんな」 榊原先輩はその答えをはじめからわかっていたみたいに、ふっと笑みをつくった。 「……ですよね。ちょっと言ってみただけです。気にしないでください」
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