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第二十五段階 イヴの契り
約束の時間より早く来て、首元のファーに手をやりながら澤口を待つ貴子。
―――早く来すぎたかも。
バッグには、澤口に渡そうと思っていたクリスマスプレゼントのネクタイを用意していた。
―――プレゼントも服もばっちりのはず。
「藤谷さん」息をきらして現れた澤口。
―――時間前なのに、こんなに急いで来てくれたのね。
「参ったな。早く来て藤谷さんを待ちたったのに」
「待ちたかったんですか?」
「そうだよ。キミが僕を見つけて急ぎ足でやってくる姿を見たかったんだ」
そう言いながら、澤口はさりげなく貴子の肩を抱いて歩き始める。
優しく見つめられて、貴子の胸は、どんどん高鳴っていく。
他愛ない話が、楽しかった。クリスマスに素敵な男性と過ごせる事が嬉しかった。
見るもの全てに夢みたいに感動出来た。
イルミネーションも自分達だけの為に輝いているようだと感じた。
こんなに素敵な日が、毎日過ごせたらどんなにいいだろうと思った。
貴子は、澤口の笑顔に夢中だった。
―――なんて、素敵に微笑むんだろう。この笑顔は今、私だけに向けられているんだわ。
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