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「どうやったら、優乃は振り向いてくれんのかなあ」
その答えが永遠に見つからないことを、私はドリンクバーから持ってきたメロンソーダに祈ってみる。メロンソーダはシュワシュワと泡を発しては、消えていく。まるで私の祈りなんて聞き入れる気がないみたいだった。
「なあ、菜子。俺はどうしたらいいんだろう」
「私に聞かれても困る」
代わりに店員さんにでも聞いてみたら、と私は呼び出しボタンを押す。「ちょ、ちょ」と慌てる柏木。どこから話せばいいんだよ、と真剣に悩み出すところが、なんとも彼らしくて、少し憎らしい。素直すぎるところが、良いところでもあり悪いところでもあるような気がする。社会人になったら苦労しそうだな、なんて社会のしゃの字も知らない私は思う。
やって来た店員さんに、私はフライドポテトを追加で注文した。
「もお、びびったじゃんか」
「このポテトは、柏木のおごりだかんね」
「頼んだのは菜子だろ」
「相談料」
そう言うと、柏木はくちびるを尖らせて押し黙ってしまった。
「それじゃあ仕方がない」と柏木は言うけれど、ちょっぴり不満気であることを顔が語ってしまっていた。私はジョーダンだよと、柏木の顔を見て笑う。何が可笑しいんだ、と本当に何が可笑しいのか分かっていないみたいで、私はまた笑いそうになってしまうけれど、キリがないのでメロンソーダで無理やり口を塞ぐ。パチパチパチと口の中で弾ける炭酸が、少し痛い。
ああ、こういうところが好きなんだよなあ、と実感してしまう。
だから、彼から「優乃」の名前が出るたびに、胸がしめつけられる思いがする。
はあ、と大きなため息をついて、彼は言う。
「優乃と同じクラスにはなれたけど、何も進展がないんだよ」
高校生活もあと一年だし焦る、と柏木は本当に困ったみたいに頭をかきながら言う。
向いている方向は違えど、その思いは私も同じだった。
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