プロローグ

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  「はっ? 攫う? 隠す!?  怖いよ! 」 女児は酷く狼狽した。 「…っ!  でも、そうなんだ」 「陽翔くんに会えなくなるの?  お父さんにもお母さんにもお兄ちゃんにも? 」 「ちなみに僕にも会えなくなるけど…」 女児はしばらく黙り込んだあと、意を決したように、唇を噛み締めると、少年に言った。 「わかった。  その夏祭りまで、陽翔くんを好きってこと、私、忘れるようにする。  本人が忘れるんだもん、他の誰も知りようがないでしょ?  それから名前を変える」 「え? 名前!?  それを変えるには大変な手続きがいると思うよ。  呼び名程度なら……変えられるけど」 「じゃあ、伊月くん、私の呼び名、変えて」 「……。  なら、茉莉花の一文字目の茉だけで  (まあ)なんてどう? 」 「うん、わかった。それにする。  それから私、髪を切って色黒になる」 「は?  何言って…」 「男の子みたいに髪が短くて、日に焼けた子、可憐で白いジャスミンが好きな神様は、きっと好きにならない」
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