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「一昨日、迷信がただの迷信だって、わかったんだ。
その衝撃たるや…。
片思いが周囲にバレたって何の影響もないってわかった以上に…、
俺の中のダムが決壊したのを感じた。
両思いになれる自信なんかなくても、決壊しちゃったから、もう心に留めておけないんだよ。
莉花ちゃん…、あの…、触っていい? 」
「ぇえ? 」
頬を赤くした陽翔くんが、ゆっくり手を伸ばしてきたので驚いて固まっていると、
私の前髪をよけて、おでこに軽く触れた。
「ここは初めてじゃないからいいでしょ? 」
中3のときの、ごっつんこ事件の再現??
「……あっ」
ピリッとして、その後、フワッとする感覚。
そうだ、確か、あのときも…。
恥ずかしさとはまた別の熱が、おでこから周囲へと、徐々に広がっていくのがわかった。
「莉花ちゃん、一つお願いがあるんだけど」
おでこに触れながら、新しい要求をしてくる陽翔くんの方が、余裕があるように感じられた。
「な、に…? 」
「俺の左頬に…キスして欲しい」
「キッ…!! 」
もう三度目になる。
朝と同じように、陽翔くんの胸をグッと押して距離を取りたいと思った。
なのに、陽翔くんの頬に自分の唇を押し当てたくなったのも事実だった。
「ごめん、驚かせて。
今日じゃなくていいんだ。
文化祭で栗本にされたのがトラウマで、いくら洗っても記憶まで消えないから、上書きして欲しくて…」
「今日、じゃなくて、いい、の? 」
なんだろう。自分でも聞いたことのないような、吐息混じりの声が出た。
あぁ、これ以上近付いたら、頬にキスどころじゃなく、私が陽翔くんを押し倒してしまう。
ていうか、これ、押し倒してる。
「う、うん、そうだよ…」
陽翔くんがそう言ったとき、ドアが開き、汗だくの佐藤くんが入ってきた。
その瞬間、陽翔くんの指がおでこから離れた。
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