15人が本棚に入れています
本棚に追加
「ぅわー、ごめん! 」
「わわ、はいっ、お手拭き」
「俺のも使って」
佐藤くんがテーブルを拭きながら、陽翔くんに言った。
「伊月さんが遠野にしたキス…の話だけどさ、
今、お前ら、それ以上のことヤりそうだったし、
伊月さんにとっちゃ黒歴史かもしれないし、
だから、触れない方がいいんじゃね?
あの人、澄ましてるように見えて、一杯一杯なのかもしれないし」
「何、余裕ぶったこと言ってんだよ。
コーラ落としたクセに。
俺は許せないよ。
俺はもう莉花ちゃんに告白したんだ。
莉花ちゃんのことが好きな男として、嫉妬心は表に出す」
「いや、石段で片足落ちただけで、」
「告白?
遠野に告白したのか!?
遠野、あのさっきの状態が返事なのか? 」
「は? 返事? 」
「それは違う!
言っただけで、まだ返事とか、そこまで話進んでないからっ」
好きだと言われた。
嬉しかった。
でも、陽翔くんの頬にキスしそうになったのは返事というより、衝動的な…。
ん? 返事って、言葉の受領の確認?
確かに聞きました、と?
いや、ハンコやサインじゃないんだから。
返事が自分の気持ちを現すためにあるのだとしたら、
「…ありがとうございます」
これが一番適切な気がした。
佐藤くんがお手拭きを握ったまま、
「ブホッ! さすが遠野」
と、おかしな笑い方をした。
「莉花ちゃん……。
…佐藤さぁ、よく笑えるよな? ヘタレの俺に告白なんかできっこないって舐めてたくせに。
でも、頬チューは積極的? 」
「積極的!? 」
驚いて声をあげた私と、
ニヤつき気味の陽翔くんを交互に見たあとで、
佐藤くんは大きなため息をついた。
最初のコメントを投稿しよう!