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「え? なんでだ…?! 」
すると、佐藤くんではなく、陽翔くんが話し始めた。
「俺の母親は病弱だったから。
伊月を産んだときにも生死をさ迷ったらしい。
父さんは、元恋人で、健康な佐藤さんに、甘えたんだ」
「は? え? 」
「うちの母ちゃんが俺を身籠ったとき、
俺の戸籍上の父親は、存命ではあったけど、入退院を繰り返してた。
そんな中で妊娠したもんだから、優しい近所の人たちは、
奇跡だとか、
旦那さんは治るんじゃないかとか、
喜ばしいことだとか、
誰も疑わなかったんだって。
ホントかよって話」
「そ、それは、佐藤くんのお母さんが素敵な人だからじゃないか?
誰も別の人の赤ちゃんだと、思わないのは」
「でも、俺の戸籍上の父親は気付いてたと思うんだ。
退院時にセックスまがいのことはしたのかもしれない。でも、その半年後には死んじまう体だったんだぜ?
妊娠に持ち込めるとは到底…。
なのに、母ちゃんの話じゃ何も言われなかったらしい」
「……そ、う…。
あ、陽翔くんのお家は大丈夫だったってことか。
陽翔くんが産まれたくらい、仲良かったんだから。
あれ? でも、そもそも奥さんが病弱だから、他の女性に頼ったのか…」
「俺の母親は、妊娠した佐藤さんを見て気づいたんだよ。
妻だからさ、麓のおばさん方とはさすがに違ったんだ。
二人の関係にそもそも疑問を抱いてたのか、そのへんは知らない。
で、俺の母親は何をしたかって言うと、父さんに頼んで、無理して二人目を妊娠した。
対抗心で」
「…え? 」
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