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「それで俺が出来た。
6月に佐藤が産まれて、翌年の1月に俺が産まれた。
そして、無理がたたって、俺の母親は死んだ」
「な……」
「庄司の母親が死んだのは庄司を産んだから。
庄司が産まれたのは俺が産まれたから。
俺が産まれたのは伊月さんに能力がなかったから。
つまり、伊月さんは自分に能力が遺伝しなかったせいで、母親を失ったと思ったんだ。
弟は二人もできたけどな」
「そんな…! 」
「軽風で飛ばせるほど軽い悩みじゃなかったけど、宮司が渾身の力で、17歳の伊月さんから、その悩みを飛ばした。
だから大丈夫だよ」
「それが伊月くんの飛ばされた悩みだったのか…。
でも、お母さんが亡くなった事実は変わらないのに、どうやって? 」
「もちろん伊月は事実を認識してるよ。
でも、悩みとして捉えなくなった。
宿命として受け入れたって感じかな。
自分に能力がないことも悔わなくなった」
「そ、う…か…。
あれ? ちょっと待って。
伊月くんは17歳で、自分のお母さんの死の真相を知っていて、陽翔くんも、佐藤くんも、もう…。
…みんな一体いつ、知ったんだ? 」
「佐藤が一番早かったよね。
伊月が出た7年前の大祭の準備段階から、父さんのそばで力の使い方を体得するよう励んでいたから」
「小学生!? 」
「宮司に伝わる力は俺だけにしか遺伝しなかったんだ。
止む終えなかったんだろ」
「佐藤くんにだけ力が!?
い、いや、だからって、」
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