高校3年生

28/137

14人が本棚に入れています
本棚に追加
/336ページ
  「それで俺が出来た。  6月に佐藤が産まれて、翌年の1月に俺が産まれた。  そして、無理がたたって、俺の母親は死んだ」 「な……」 「庄司の母親が死んだのは庄司を産んだから。  庄司が産まれたのは俺が産まれたから。  俺が産まれたのは伊月さんに能力がなかったから。  つまり、伊月さんは自分に能力が遺伝しなかったせいで、母親を失ったと思ったんだ。  弟は二人もできたけどな」 「そんな…! 」 「軽風で飛ばせるほど軽い悩みじゃなかったけど、宮司が渾身の力で、17歳の伊月さんから、その悩みを飛ばした。  だから大丈夫だよ」 「それが伊月くんの飛ばされた悩みだったのか…。  でも、お母さんが亡くなった事実は変わらないのに、どうやって? 」 「もちろん伊月は事実を認識してるよ。  でも、悩みとして捉えなくなった。  宿命として受け入れたって感じかな。  自分に能力がないことも悔わなくなった」 「そ、う…か…。  あれ? ちょっと待って。  伊月くんは17歳で、自分のお母さんの死の真相を知っていて、陽翔くんも、佐藤くんも、もう…。  …みんな一体いつ、知ったんだ? 」 「佐藤が一番早かったよね。  伊月が出た7年前の大祭の準備段階から、父さんのそばで力の使い方を体得するよう励んでいたから」 「小学生!? 」 「宮司に伝わる力は俺だけにしか遺伝しなかったんだ。  止む終えなかったんだろ」 「佐藤くんにだけ力が!?  い、いや、だからって、」
/336ページ

最初のコメントを投稿しよう!

14人が本棚に入れています
本棚に追加