14人が本棚に入れています
本棚に追加
/336ページ
「だから、せめて大学は好きなところに行って、好きなことをしろって、父さん、佐藤に言い出したんだよね。
国立じゃなく、私大でもいいって。学費は出すから」
「それでセンター利用の私大に変更したんだ。
でも指定校推薦を選択肢に入れないのはなんでだろう? 」
「指定校推薦は高校の代表として、大学でもいい成績を維持するって約束で入学するから、ダメでしょ」
「指定校の条件は知ってるよ。
でも、なんでダメ?
佐藤くん、優秀なのに」
「え?
佐藤の夢は、太一くんみたいに箱根に出ることなんじゃないの? 」
「エ! その夢ってまだ変わってなかったのか!? 」
箱根駅伝で実績のある私大は、高校駅伝などでいい成績を納めた選手をスポーツ推薦というより、一本釣りで獲得している。
私の兄の太一がそうだったように。
そして兄の学生時代の様子を見てわかったことがあった。
選手としてのレベルを維持する練習は、授業を受けに行ってたら無理なのだ。
『テスト期間以外はキャンパスに行かない』
と、大学生のとき、兄が言っていた。
一緒に卒業できなかった同級生もいた。
「まぁ、確かに、うちの高校を選んだ時点で無理があったよね。
一般受験組が箱根に出てる大学もあるにはあるけど」
「佐藤くん、どこまで本気なんだろう」
「アイツ、掴み所がないからな…」
最初のコメントを投稿しよう!