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「電車で栗本が聞いてくるのは伊月のことが多かったかな。
あ、ねぇ、栗本の進路は聞いて、俺の進路を聞かないのはなんで?」
「地元の国立大学の医学部を目指してるって聞いたよ」
「また伊月から? 」
「伊月くんから聞いたけど、またって何? 」
駐車場を過ぎてから一つ目のカーブに差し掛かった。
「ねぇ、莉花ちゃん」
「うん? 左右交換する? 」
カーブの内側は傾斜がキツいので、小回りの効く私の自転車の方が適していた。
「違うよ。
頬キスのことなんだけど」
「え゛!? 」
「俺、莉花ちゃんにされることばっかり考えてて、
自分がするって意識に欠けてた。
でも、さっき伊月にされたって聞いて。
俺も莉花ちゃんにしたい。すごく。
それは上書きって言うより対抗心だから、右でも左でもどっちでもいい」
「ちょ…」
っと待て! 私は心の中で悲鳴をあげた。
伊月くんのは石段でズッコケただけだ。
一方、カラオケボックスで、私は陽翔くんに体を密着させ、自分から頬キスを迫るような態度に出た。
衝動的に。というより本能的に?
陽翔くんと二人きりで頬にキスし合いっこなんかしたら、私はどうなってしまうのだろう。
女豹になるのか?!
なんなら、野獣?!
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