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そんな発想、おかしいのはわかっていた。
でも心許なくて不安で、掴める物ならなんでも、という気持ちになり、自分の自転車のハンドルを一層強く握った。
「莉花ちゃん、ごめん。
車が来るから、はじに寄ろう。
動ける? 」
陽翔くんの声に顔を上げると、雑木林の向こうに扇状に伸びる車のライトが見えた。
「…あれは、伊月くんの車だ」
なぜだか、確信した。
「あぁ、そうだね。
心配になって見に来たんだ」
カーブを曲がってこちらに来た車が、陽翔くんと私の脇で止まった。
ウィンドウが下げられ、驚いた表情で助手席側に身を乗り出す伊月くんが見えた。
「二人、一緒だったんだ。
茉、遅いからお母さんが心配してるよ」
「ごめんなさい」
スマホを確認すると確かに母からの着信が数回あった。
伊月くんのも。
母はたまに伊月くんのことを兄の太一のように頼るときがあった。
本当に申し訳なかった。
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