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「帰ってこない?
朝はいたんだろ? 」
「朝帰りってやつだと思う」
目の前に座る、スーツに金バッジを付けた男性が、発言者の陽翔くんをチラ見した。
彼にとって、今まで別の車両に乗っていた陽翔くんは新参者だ。
「二人ともちょっと、」
「朝までどこにいたわけ? 」
「わからない。
けど、伊月の昨日の夜の行動と、今朝の莉花ちゃんとのやりとり……
栗本のことをマツリって呼んだり、
雨の日に莉花ちゃんじゃなく、栗本を送ることにしたとか……、
そういうことを総合すると栗本の家、なんだと思う」
「もう終わりっ」
私は陽翔くんを左肘で小突き、佐藤くんの頭を右掌で押した。
「イッ……莉花ちゃん、動揺した? 」
「ここで話すことじゃないって点で動揺した。
次で岩野栞ちゃんも乗ってくる」
「悪ぃ、ふざけ過ぎた。はは…」
笑顔の佐藤くんとは対照的に、陽翔くんがガックリと項垂れたので驚いた。
「この程度じゃ莉花ちゃんの思いは揺るがないってことか」
伊月くんへの信頼ってこと?
「そうだね」
あのレースのカーテンじゃ、といのもある。
「庄司、節穴が過ぎる…」
スーツ姿の男性が目線はスマホのまま、小さく笑った。
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