プロローグ

2/20
前へ
/336ページ
次へ
  「茉莉花(まりか)がプリント届けに来てくれたの?  太一(たいち)じゃなくて? 」 「うん。  お兄ちゃん、学校から帰ってきたら、すぐまた出掛けちゃったの。ごめんって言ってたよ。  それより伊月(いつき)くん、外に出て大丈夫なの?  風邪引いて、学校休んでるんでしょ? 」 「あぁ、もうよくなったから明日から行くつもりだよ。  でも、嬉しいな。  茉莉花(まりか)がわざわざ来てくれて…」 「そう?  はい、どうぞ。  中学校のお手紙」 「…うん」 恥ずかしそうに微笑んだ少年が、女児から茶封筒を受け取った。 「茉莉花、ありがとう。  太一にもよろしく言っておいて。  またね」 少年が女児の頭を(ひと)撫でし、拝殿の方に引き返そうとした。 すると、 「あっ、ちょっとまって、まだ……」 少年の背中に慌てて話し掛けた女児が、全身に力を込め、体を震わせた。 そして、空気を裂くような声の大きさで、こう言った。 「はーるとくんっ!!  遊びましょーーっ!!! 」
/336ページ

最初のコメントを投稿しよう!

15人が本棚に入れています
本棚に追加