58人が本棚に入れています
本棚に追加
2-1.外科女医 笹山ゆみ Emergency Doctor 救命医
私は何故、医者になったのだろう。
幼いころから病院と言う施設の環境をこの目で見てそして感じ、教育されたかのようにその道に進むべくものだと……本当にそうだったんだろうか? 自分の進むべく道は自分で決める。それが高校の時私が決めた事だった。
だが蓋を開けてみれば、私は医療と言う自分の生活の一部として育った環境の中から脱することが出来ないでいた。
でもそれには訳がある。
私には追うべき人がいたから、その人の背中をいつも見続けていたから……
そして気が付けば、この世界に身を投じて10年もの歳月が過ぎ去っていた。
外科医として、私はメスを握る日々を繰り返す。
この城環越医科大学病院、高度救命センターで勤務を始めてからもうすでに3年の月日が流れている。
3年前、私はある大学病院の外科を辞め、この救命センターに移籍した。
実務と言っては何だが、臨床症例の数はそこらの外科医には負けない自信がある。この手に、この体に、そしてこの頭の中にその経験が染み込まれている。
そう、私のこのグローブをはめた手は、常に人の赤い血にまみれている。
最初のコメントを投稿しよう!