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切除した肝臓の断面、胆管の裏に沿う様に小さな病巣の様な部分を目にした。
第一助手の中岡庸寿が私のその表情を読み取ったのか
「如何かなされましたか?」と声をかける。
「いや、気になるところが目に入ってな。この部分どう診る?」
「どこですか?」とモニターを食い入るように見るが彼はその部分に気が付かなかったようだ。
「胆管の裏側だ」
その言葉に反応するように彼はまたモニターを見続けた。そして
「あ、」と声を上げ
「よく見つけましたね。こんなに小さいの! でもよく見ると多分ちょっと散らばっていませんか?」
「そうなんだ、変異部位は本当に小さいがその部分が幾分散らばっている様にも見える」
ほんの1ミリにも及ばない点の様なものだ。
「どうしますか?」その言葉に迷わず
「術式変更、開腹する。腹腔鏡では位置が悪すぎる。それに直接肝臓の状態を目にした方がいいだろう」
「わかりました」
その指示に側近の看護師が即座に対応するように体を動かした。
想定される器具を準備し、麻酔科医が再度麻酔の調整を行う。
腹腔鏡を患者から離し、麻酔科医が私の方を見て頷く。
準備が整ったという合図だ
「メス」迷わずメスを握り、腹部に刃を滑らす様にメスを入れる。
すでに電極は大腿部に張り付けている。
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