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鬼は血が濃いほど頑強で長命だが、本来子孫が残しづらい。そのため長い歴史の中で幾度も絶えかけた。傍系は人間より少し長い程度の寿命しか持たない代わりに、子々孫々がたとえ薄まろうとも鬼の血を繋いで来た。が、外傷や病気には人間並みの治癒力しかない。それは秘術が施されようと変わらなかった。
「でもねぇ公爵さま。魂は同じでも、清四郎と圭は別の者。決して、そこを忘れないでやってください。今生きている者こそ、大切にされるべきものです。そしてそれこそが清四郎の供養にもなりましょう」
「解っております……お約束致します。さぁ、鈴鹿どの、こちらへ」
ジークは手を差し伸べ、鈴鹿を招いた。そしてその耳の裏に唇を押しあて、すぅっと気を吸った。右手の中指を口許に添えると、そこから淡い紫色の気が立ち上る。鈴鹿はそれを思い切り吸い込んだ。
と同時に白い頬に赤みが差し、束ねられた髪が艶を取り戻してゆく。鈴鹿がその髪を解くと、一角獣のように見事な角が姿を現した。
「ふぅ。公爵さまの滋養はホンット効きます。でもホンット眠くなります……甚左、膝を……」
鈴鹿は宗親の膝に臥せると、あっという間にスヤスヤと寝息を立て始めた。宗親は鈴鹿の髪を梳き、頬を撫で、愛しげに見下ろす。
「二十歳のむすめのように柔肌を取り戻してらぁ」
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