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永い刻を渡っても、愛する者を慈しむ気持ちは変わりようがない。その中でジークはただただ、時が満ちるのを待ち侘びるしかない。
「さてドラコ。そろそろ朔の力も届かなくなる。俺にも滋養を分けてくんな」
「うむ」
ジークはソファの背後に立ち、宗親の耳の後ろに唇を当てた。直系の気はやはり殊の外濃く、少し吸っただけでもクラクラする。中指からは吸った傍から真紅の滋養が立ち上り、早く吸い出して貰わないと望月まで寝込む事になる。なるほど、鬼の直系とジークは相容れないのだ。
「おお、効く効く。滋養が満ちて来やがった。小天狗!」
「はいっ!」
鴉天狗は一際大きく錫杖を構え、力一杯振り下ろす。宗親の頭上には真っ赤な渦が巻き起こった。
「じゃあなドラコ。またどこかの朔で」
「うむ。息災であれ」
宗親もやはり見事な双角を現し、赤黒い顔で笑った。そして鈴鹿を抱いたまま、赤い渦に呑まれて行った。
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