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応接室に残った三人は、ふう、と溜息を吐く。
「お館様の瘴気はまこと濃厚……御前様でなければとても受け容れられませぬ」
「あい……まったくにござりまする~~……」
鴉天狗は目を回してついに倒れ込んだ。ジークは鴉天狗を両手でそっと抱き上げ、嘴の端の裏側にある、小さな耳の後ろを吸った。するとその体はヒト型・鈴木となり、やがてジークの指先から流れる滋養を啜りあげた。
「本来の姿では滋養も吸えぬ……不便な体よの」
「薔薇の茶を点てましょう」
「うむ」
「小天狗は起きたらまたくしゃみばかりになりましょうな」
「鈴木の時はまだマシであろう。でないと茶房にも居られん」
果心居士はジークの滋養を必要としない。その代わりに香りの強い茶を啜る事で鋭気を養う。性質的にジークと似た類なのだろう。
「茶の香りは植物の断末魔……其方も私もいい趣味とは言えぬな」
「ホホホッ。今更ですな、ドラゴシュ公」
薔薇の茶をひと口流し込み、ジークは窓の外を見下ろした。
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