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鬼凝りの儀式は毎年六月の新月から、翌月の新月までひと月続く。
宗親の様な一族の直系、純血に近ければ一刻で済むが、坤守家は傍系で、長い時のうちに血が混じって鬼の血が薄まってしまった経緯がある。
鬼凝りは再び鬼の血を濃くする為の秘術だ。
圭が元服を迎えた十五才から毎年、閉じられた部屋の中で施されてきた術式は二十六才の祇園祭に成就の日を迎える。まだあと四年。ジークは愛する者と、何度も出会いと別れを繰り返している。
「ただ、いくら凝って鬼となれたところで、よく持って五百年。ドラコのように不老不死にはなれねぇ。永く添えば添うただけ、また百年二百年泣く羽目にならぁ」
「百年泣き暮らしても、百一年目に生まれ変わってくれればよい。私は必ずその魂を見つける。圭を見つけたように」
「不老不死にだけはなりたくねぇもんだな……」
まったくその通りだ、とジークは思う。けれどその五百年の間に、もしかしたら自分を滅する方法も見つかるかも知れない……。
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