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「森で迷子になっていらしたネロ様を送り届けに来ました。」
門番達はネロの姿を見ると槍を解いて二人を村に入れてくれた。村に入るとネロはベリーを自分の家に案内した。ネロの家はこの村では一般的な木でできた小さな家だった。
「ただいま。」
「お兄ちゃん! どこ行ってたの! 心配したんだよ!」
ネロが家に入ると中からネロよりも小さい女の子が飛び出してきた。長い髪にリボンを付けたその女の子はネロにがしっと抱きついた。
「ご、ごめんアリス。お母さんのためにコウ草を採ってこようとしたんだけど迷っちゃって…、それでベリーさんに助けてもらったんだ。」
「ベリーさん、妹のアリスです。兄がお世話になりました。」
小さい女の子_アリスはベリーにペコリと頭を下げた。
「どういたしまして。」
「ベリーさん、良かったら上がっていってください。今お茶を入れるので。」
ネロの勧めでベリーはネロの家に上がった。ネロはベリーを居間に通すとお茶を入れるために台所へ向かった。お茶を待つ間、ベリーはアリスと居間で二人きりになる。どうやら二人の母親は居間の隣で寝ているようで、時折ゴホゴホと苦しそうな咳が聞こえる。
「…お母様、苦しそうですね。」
「…はい、何とかしてあげたいですけど、どうにもならなくて。」
アリスは何もしてあげられないことが悔しそうに俯いた。それはお茶を入れてきたネロも同じなようで、ベリーの前のテーブルにお茶を置いたネロは俯いて暗い顔をしていた。ネロもアリスも俯いて全く喋らなくなってしまったので居間に暗い空気が流れる。そんな中、ベリーはお茶を一口飲むとネロに話しかけた。
「ネロ様、新しい人生が欲しくはないですか?」
その問いかけにネロとアリスは首を傾げた。ベリーの質問の意味が分からなかったからだ。
「新しい人生…ですか?」
ネロはベリーに聞き返した。
「人生レストランはネロ様のようなお客様に新しい人生を提供するレストランです。ネロ様がお望みであれば私ベリー・ネフェクロスがあなたに新たな人生をお与えいたします。」
ベリーは淡々と説明した。その説明を聞いてもネロにはよく分からなかった。人生を提供する、そんな話は聞いたことがない。
「このままの人生を歩んでもお母様は苦しみ続けるだけでしょう。しかし、新たな人生に踏み出せば違った展開があるかもしれません。いかがいたしますか?」
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