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だが、どういうことかよく分からなくてもネロの答えは決まっていた。母が助かるというのなら、藁にも縋る思いでいたのだ。彼女は人生レストランなるものの支配人。人生をもらうなら後にそれ相応の代金を払わねばならないだろう。だが、どんなに高い代金であっても必ず払う覚悟がネロにはあった。
「…お願いします! お母さんを助けてくださいっ!」
ネロはベリーにそう頼んだ。それを聞いたベリーはニコッと笑う。
「かしこまりました。」
ベリーは目を瞑り、手を胸の前で合わせた。しばらくその状態を保った後、ゆっくりと合わせた手を開いていく。するとその手の間に並々ならぬ雰囲気を持つ小さな黒い球が出現した。
「っ!」
「お兄ちゃん! 何あれ!?」
ベリーの手の間に出現したものを見てネロとアリスは息を?む。アリスはそれが何なのか分からなかったが、ネロはその黒い球の正体を知っていた。
「あれは…魔力…?」
魔力…それはこの世界で様々なことに利用されるエネルギーだ。生活を便利にする道具
_魔道具のエネルギー源となる他、戦いにおいても重要な要素となる。ネロはアリスがまだ生まれて間もない頃、冒険者である父に見せてもらったことがあった。だが、ベリーは今見せている魔力はかなり強大な力がギュッと凝縮されており、その力は父の魔力を優に超えている。
ベリーは魔力の球体を右の掌の上でふわふわ浮かべると、ふうっと息を吹きかけた。すると球体はスーッと浮遊してネロの元へ向かう。到達すると球体はネロの身体に吸い込まれた。
「わっ! わっ!」
自分の身体に入った球体に驚き慌てるネロ、そんなネロの身体が淡い光に包まれる。その光と共にネロは体の奥底から感じたことのない力が湧き上がってくるのを感じた。やがてその力がネロに馴染むかのように、光はスーッと収まっていった。
「…これって…」
「お、お兄ちゃん大丈夫?」
その時にはもうネロに新しい力が宿っていた。ネロはぐっぐっと拳を握りしめてその力の存在を確かめる。アリスは心配になってネロの顔を覗き込む。ネロは「大丈夫だよ」と返した。
「いかがでしょう、お気に召しましたでしょうか?」
「すごいです…正直何がすごいのかは分かりませんけど、何か、力が溢れてきます…」
そんなネロにベリーはニコッと笑って手をかざした。
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