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花弁が白く輝いている花だ。ネロは腕を伸ばしてコウ草を採る。
ズゥン…!
と、その時、ふとネロの背後から重い足音が響いた。ネロはコウ草を大事そうに胸に抱え、恐る恐る後ろを振り向く。
「フシュー…フシュー…」
そこには人型の牛がいた。頭から角を二本生やし、真っ赤な肌と筋骨隆々な肉体を持つそれは、ぼたぼたと涎を垂らしながらゆっくりとネロへ近づいてくる。マントスジュニアよりさらに上の危険度を持つ魔物、ミノタウロスだ。かなり上位の魔物の登場に力を得たネロもさすがにひやりと汗をかく。ミノタウロスは血走った目をして持っている大きな金棒を振りかぶった。
「ブモォッ!!」
ドガァァンッ!!
「うわっ!」
振るわれた金棒をネロは間一髪かわすことができた。身体能力に比例して動体視力も上がっていたことが幸いした。金棒を振るわれた地面はボコンとクレーターができてしまっている。ネロがまともにあれを喰らえばひとたまりもない。
ドゴォンッ!ドゴォンッ!
「わっ! ちょっ!」
そんな一撃をミノタウロスは何度も振るった。ネロは上がった身体能力で何とかかわしていく。
「っ! しまった…。」
だが、それもこれまでのようだ。逃げ回っている内にネロは谷の方へ追い込まれてしまった。ネロのすぐ後ろでは小石がポロッと谷へ落ち、ヒューと漆黒の闇へ吸い込まれていった。ネロの目の前ではミノタウロスがニヤリと笑う。ミノタウロス程の危険度の魔物となると強さだけではなく、知性も持ち合わせていることが多いのだ。ネロは迫り来るミノタウロスにギリッと歯ぎしりをする。
「こんな所で死んでたまるか…。僕はアリスに言ったんだ、必ず帰るって…。」
「ブモォ…!」
崖っぷちのネロにミノタウロスは無慈悲に金棒を振りかぶる。
「お前なんかにやられてたまるかーー!!」
その時、ネロは夜空に向かって思い切り叫んだ。ネロの声が夜の森に木霊する。すると奇跡が起こった。
カッとネロから光の柱が放たれるとそれは夜空に向かって伸びていく。やがてその光が空に届くといくつかの星々が輝きだす。それは射手座を象る星々だった。その星々の光がネロに集約するとネロはボゥ、と黄色い炎のようなオーラを身にまとう。
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