第一話

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「……はれ?」  ちょうど泣き疲れた頃、少年はある建物を見つけた。その建物は洋風の館のような見た目で、森の中にある建物とは思えない程綺麗で、国王のお膝元である王都の建物のようだった。   「綺麗な建物だなぁ…。でも何で森の中にあるんだろう?」  少年はその建物の存在を不思議に思ったが、辺りはもうどっぷり夜になってしまっている。このまま森を歩くのは危険すぎると思った少年はこの館の人に助けを求めようと思った。少年が館の入り口の二枚扉の片方を引くと、扉は重々しくギィと音を立てて開いた。 「わぁ、中も綺麗…。」  館の中に入った少年はその内装に思わずほぅと息を吐いた。天井からはまるでシャンデリアのように五本ろうそくが吊るされていて、入り口の正面にはカウンター、壁際にはフカフカのソファーが置かれている。 「あ、あのっ…、誰かいませんか?」  綺麗ではあるが、館の中は外が夜であることもあって暗く、少し不気味な印象を受ける。少年は小さく縮こまりながらそう呼びかけた。その時だった。 ボボッ! 「わっ!」  急にシャンデリアのろうそくに火が灯り、部屋が明るくなった。急な出来事に驚いた少年は一瞬目を瞑った。「あ、あれ?」  次に目を開けた時、少年は不思議に思った。なぜなら目の前にさっきまでいなかったはずの女性がいたからだ。その女性は少年が見たことがないくらい綺麗な女性だった。黒い髪に整った顔立ちで、その赤い瞳の美しさが黒い髪によってより際立つ。黒い服の上に白いエプロンをかけたメイド服がよく似合っている。 「いらっしゃいませ。」 「え? ええ?」  少年がその女性を見ていると、女性は少年にペコリと綺麗にお辞儀をした。一寸の狂いもないその動きはまるで本当に貴族や王族のメイドのようだ。 「『人生レストラン』へようこそ。」 「じ、人生レストラン?」  女性の綺麗ながらもあまり感情が感じられない目に、少年は少し怯えながらもそう聞き返した。 「はい、ご来店いただいたお客様に様々な人生をお楽しみいただく人生レストラン。私は支配人のベリー・ネフェクロスと申します。」 「は、はい! 僕はネロです! よろしくお願いしますっ!」  女性_ベリーはとても整った姿勢で自己紹介をした。少年_ネロはそれに必死に合わせようとビシッと背筋を伸ばして自己紹介をした。
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