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頑張って背伸びをしようとするネロにベリーはクスッと笑みを浮かべた。
「よろしくお願いいたします。さてネロ様、今宵メニューは……」
「あ、あのっ! 僕は別にお客さんじゃないんですっ! すみませんっ!」
自分を客として扱おうとするベリーにネロは慌てて否定した。
「おや、そうでしたか。これは失礼しました。」
ベリーはネロに謝ると、ネロに近づき、顔をずいっと近づけた。急に間近に来た端麗な顔にネロは顔が赤くなるのを感じる。
「何かある人生をお探しのように感じられましたから。」
「? あの、それはどういう…?」
ネロが聞く前にベリーはスッと顔を離してしまった。
「しかし、夜の森を歩いていたのなら身体が冷えているでしょう。ネロ様、こちらへ。」
ネロはベリーの案内について行く。入り口からカウンターに進んで右に曲がると二枚扉があった。ベリーはその扉をキィと開けるとネロを中に案内する。
「わぁ…。」
ネロが案内されたその部屋はとても広い部屋だった。綺麗に掃除されたその部屋にはいくつかテーブルが置かれ、レストランと呼ぶにふさわしい部屋だった。ここが彼女のレストランの客室なのだろう。
「どうぞこちらに。」
ネロが部屋をキョロキョロ見渡しているとベリーが窓際のテーブルの椅子を引いてくれていた。ネロは引いてくれた椅子に腰かける。
「ただいま料理をお持ちいたします。しばしお待ちを。」
ベリーはネロにペコリと頭を下げると客室の奥の部屋に行ってしまった。ベリーが向かった先には恐らく厨房があるのだろう。去っていくベリーの後ろ姿をネロはじっと見つめていた。
フリフリ
「…しっぽ?」
ベリーの後ろ姿でネロはある部分に注目していた。それは案内された時から気になっていた、ベリーの腰の辺りでフリフリと揺れる黒い尻尾だった。天井を向いている細長いそれは猫の尻尾のように見える。そういえば、とネロは彼女は黒髪だったが、頭から動物の耳がぴょこんと生えているような髪型だったことを思い出した。もしかしてあれは本物の耳だったんじゃないだろうか。
「ネロ様?」
「ひゃ、ひゃいっ!?」
深く考え込んでいたネロはベリーの声に驚いた。
「お待たせいたしました、どうぞお召し上がりください。」
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