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「ご安心くださいネロ様、当店は人生レストランです。料理から代金を頂くことは致しません。」
「そ、そうなんですか…」
ベリーの言葉にネロはほっと胸を撫でおろした。ネロは椅子に座り直し、改めてコーンポタージュを食べる。その美味しさにネロはついつい頬が緩んでしまう。
「あの…ベリーさん。」
安心したネロは気になっていたことを聞いてみた。
「あなたは獣人族なんですか?」
獣人族とは、この世界に生きる種族の一つである。犬や猫といった動物の特徴を持つ彼らは人間よりも身体能力が優れた種族として有名だ。ネロはベリーの耳と尻尾を見てそう思った。
質問されたベリーは自分の尻尾を見て答えた。
「まぁ、そのようなもので。」
何となくその表情に影が見えた気がした。しまったと思ったネロは慌てて言い加える。
「あ、あのっ! 僕は差別とかしないので大丈夫ですよっ!」
獣人族は優れた種族なのだが、人間が優位な立場にあるこの世界においては、虐げられることがままあり、場合によっては捕らえられて奴隷として売り飛ばされてしまうこともある。もっとも、それは獣人族だけでなく他の種族にも言えることなのだが。
そんな背景があり、ネロはベリーの種族を指摘したことで彼女を傷つけてしまったと思ったのだ。
「お気遣いありがとうございます。」
ベリーはネロにペコリと頭を下げた。その顔に先ほど少し見えた気がした影はなく、ネロはほっとした。
「あ…」
ネロはコーンポタージュを夢中で食べて、ついに最後の一口になった。名残惜しそうな顔をしてネロはその一口を口に運ぶ。
「ごちそうさまでした。美味しかったです。」
「それは何より。」
ベリーはネロが食べ終わった皿を持って厨房へ戻っていった。その後ベリーはコーヒーカップを持って戻ってきた。ネロはベリーに出された食後のコーヒーを飲む。そのコーヒーも子供のネロに合わせて砂糖やミルクが多めに入れられていて、大変美味しく飲むことができた。
「ベリーさん、何から何までありがとうございます。」
森で迷った自分を助けてくれたベリーにネロはお礼を言った。それに対してベリーは何も言わず会釈をする。
「…それで、その、重ねるようなんですけど…」
「? 何か?」
「”コウ草”っていう薬草を持っていませんか?」
ネロは申し訳なさそうにベリーに言った。
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