【2】その指が指す先に

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「課長、お疲れ様です。五課と協議した例のヤミ医者の聞き込みに行ってきます」  庁内の組織犯罪対策部があるフロアから出た所で四課の課長と出くわした。警視でもある課長の岩見は、見た目は厳ついが頼りがいのある上司だ。現在の乃木が置かれた立場も理解してくれている。 「ご苦労さん。例の会議の内容か。五課と話し合いが済んでるなら特に問題ないな。大谷と行ってくれ」 「分かりました」  乃木は課長に一礼して廊下に出た。大谷と並んで歩く。しばらくすると前から五課の捜査員が三人、こちらに向かって歩いてくるのが見えた。真ん中に薬物捜査第一係のリーダーが立っている。すれ違いざまに嫌味を言われた。 「あれ? ここ十三階だったか?」 「違いますよ」  リーダーの子飼いが面白そうに答える。 「四課のボンクラハム(、、、、、、)が」 「出戻りが偉そうな顔するなよ」  三人それぞれ言いたい言葉を吐いてすっきりしたのか、それ以上は絡んでこなかった。ニヤニヤ笑いながらフロアに消える。 「全く……因縁のつけ方がまるでチンピラだな」  隣にいた大谷が苦笑している。乃木は仕方がないと肩を竦めて見せた。  ――ボンクラハム。  これが現在の乃木のあだ名だ。
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