【2】その指が指す先に

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 乃木はしばらくの間、現実を受け止められなかった。  二人は慣れた様子で処置を進めている。乃木は吐き気をこらえながら、ただ眺めていることしかできなかった。 「えーっとね、ウチは松・竹・梅コースでやってるから好きなの選んでね」 「先生、はっ……早く、麻酔を――」 「麻酔はコース決めてからね。順番だよ、順番」  処置室の椅子に座った男の前に小藪と成世が立っている。その少し離れた所に乃木はいた。大谷はまだ戻ってきていない。 「梅コースはただ縫うだけ。竹コースはただ着けるだけ。松コースはちゃんと動くように着ける。もちろん、それぞれお値段が違いまーす」 「そ、そんなっ……」 「ちなみに竹コースだとほとんどの場合、壊死して脱落するから、梅か松がオススメだよ。着けるか着けないか、それが問題だ。ヤクザなら男らしく決断してね」 「ちゃ、ちゃんと着けて下さい、お願いします。早く麻酔を――」 「オッケー分かった。松コース入りまーす。ナルちゃん悪いね。いつもいる看護師が二日酔いが酷いからって帰っちゃったんだ。だからコレ手伝って。あと、ハムちゃんも」 「ふざけるな!」  乃木は怒鳴ったが効果はないようだった。
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