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暴力団対策法や暴力団排除条例、組織犯罪処罰法の制定により、昨今の暴力団組員は金融機関の口座開設や住宅の賃貸契約はもちろん、名刺一枚でさえも作れなくなった。大手を振って一端の極道として生きていける時代はとうに終わったのだ。そのせいか現在のヤクザは巧妙な組織化を図り、マフィア化していると言われている。特に後藤田組はそれが顕著だった。
組長である後藤田には先見の明があった。誰よりも勘がよく頭が切れ、ビジネスセンスに長けていた後藤田は、警察の動向を逸早く嗅ぎつけ、法の制定を見据えた上で、フロント企業の幹部らを次々と破門にした。そして彼らを経営者として担ぎ出した上で、新たなマーケットを求めて法整備のない海外へ打って出た。組員のシノギでは裏稼業と正業の両方を持たせ、徐々にその溝をなくさせた。現在は数社あるフロント企業の中で、ヤクザのそれだと知らずに働いている堅気の正社員が多いと聞く。
「おっと」
大谷が声を上げる。
「――レクサスLS、後藤田の愛車だ。後続の二台も後藤田組幹部の車だ」
大谷が助手席から指差した。黒塗りの車が路地に入ってくる。車は大通りから一本入った道を曲がった。
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