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「もう!ミナト、人前では話かけて来ないでよ!」
学校が終わった私は人気がないのを確認して、私の右斜め上で交差させた腕を枕にし寝転んだ状態で浮いているミナトに文句を言ってやった。
『えー、だってひまなんだもーん』
「『だもん』とか言っても、可愛くない!アンタの姿も声も誰にも見えないし聞こえないから良いけど、聞こえる私にはうるさくて授業に集中できないんだからね!」
『アカリがすっげー意識してくれてるみたいでそれ良いな』
私はかなり怒っているのに、ミナトはすごく上機嫌だが、急にくるりと起き上がり私の前に左腕を出し立ち止まらせ、眉間にシワを寄せまるで威嚇しているように前方を睨んでいる。
海岸沿いを歩いているので潮の香りを纏った風が私の髪をさらって空で泳がせる。
「……何?どうしたの」
ミナトを見上げて問いかけるが、こういう時のミナトは怖い顔のまま前だけを見据え返事をしてくれない。
「ねえ」
しばらく経ってミナトがふっと一息ついて目を閉じたのを確認し、再度声をかけるとミナトは優しく微笑んでくれる。
『今日は月が綺麗だろうね』
「今日は三日月だよ?」
微笑むミナトの後ろの空にはうっすらと三日月が姿を見せているのが目に入り答えると、ミナトは目を細めて更に微笑む。
『三日月でも関係ないよ、月が綺麗だ。だからアカリは俺だけを視ててね。』
ミナトは時折独占的を剥き出す。
正直複雑だが、生前のミナトは死にたがりという性格ではあるが顔はイケメンだから微笑みを浮かべながらそんなクサイ台詞を言われると少なからずドキリとしてしまう。
『……アカリは俺"だけ"見えていたら良いんだよ』
「え?なんて?」
前を向いたミナトがポソリと何かを言ったが、少し強い風が吹き付け聞こえなかった。
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