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『なあ、あそこ寄っていこうよ』
ミナトが灯台を指差してニコニコ笑う。
正直早く帰りたいが、拒否すればウザさが倍増するから私はため息をついて無言でついていく。
『アカリは何で灯台があるか知ってる?』
灯台へ向かいながらふわふわ浮いているミナトが問いかけてき、私は足をとめずに答える。
「そんなの、海を航行する船が自分たちの位置を知るための目印でしょ?」
『うん、真っ暗な夜間には灯台の灯りがすっげー重要なんだよ』
すると、ミナトは私の前にやってきてまるで立っているように足をアスファルトにつける。
『港には灯りが必要なんだよ。』
まっすぐな目で私を見据えるミナトの表情があまりに真剣でなに何も言えなくなった。
『アカリが知ってる通り、生前の俺は死にたがりで特に意味もなくよく自殺未遂をしてたんだけどさ』
船が汽笛を鳴らし、くるくると回転する灯台の灯りと風が私達を包み込む。
『俺には生きた人間と同じように魑魅魍魎が見えるし、アイツらの声も聞こえてたんだ。そしてアイツらは何故かキミを狙っていた。』
「うそ、、……どうして?」
『何故狙われているかは解らない。どうしてもアカリを護りたくて、……だけど生きたままだと霊力とか何の力もない俺にはアカリを護れないから……だから俺は望んで死んだ』
いつの間にか日が暮れ、群青色の空に三日月が輝く。
『迷惑だろうけど、アカリには俺を必要としてほしい』
サアサアと波が規則的な音を鳴らす。
混乱する私の頬を透けるミナトの大きな手が撫でる。
『月が綺麗だね』
相変わらず月を見ずに言うミナトに私は今までの彼の言動を思い返し小さく頷いた。
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