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売れない
「やぁ、起きたかい」
胡散臭そうな顔が覗き込んできた。
「今日のお客さんはきっといい人だよ。行こうか」
差し伸べられた手を握りしめ、後ろをトコトコとついて行く。
この人は私を買ってはくれないのだろうか。
「こんにちは」
今日のお客さんは、油の乗ったおじさんだ。
この人、嫌だな。
「……こんにちは」
商品は、購入者に従う。
「この子、お試しが何円だって?」
気持ちの悪い笑みでおじさんに視線を移した。
「非売品ですよ?」
「え?」
「この子は貴方のような人には売れません」
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