神野桜という女

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神野桜という女

1、神野桜という女 ① 「美人ですね。」 「ありがとうございます。」 お決まりの返し文句。 つい先程までいた別のバーから合わせて10人の男性に同じことを言われた。どこに行ってもこの会話をするのかと、桜は内心冷やかな気持ちだった。 「スタイルもいい。」 「そんなことないですよ。」 「モデルさんとかですか?」 「いいえ、違いますよ。」 またこれか。 桜にとっては、よくある会話の繰り返しでしかなかった為、否定しながら喜ぶ素振りもお手の物だった。二人はほんのりオレンジ色をまとったテーブルの上に置いたグラスを取り、口に運んだ。それは珍しく2杯目のお酒であった。 「、、、お家、どこですか?」 グラスから口を外したかと思うと、男はにこりと笑ってそう言った。
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