神野桜という女

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② "ブブ" 携帯の振動する音で桜は薄っすらと目を覚ました。 ディスプレイを見ると、"たかし"と表示されていた。 ー桜さん、お疲れ様です。さっきは楽しかったです。今度、お時間あるときに会いませんか?ー みると通知は9件で、他にも似たような文章が並べられていた。桜は躊躇なく、消去ボタンを押す。 そして連絡先をブロックする作業に入った。 画面の光を顔に浴びながら、彼女は自分が何をしたいのか何を求めているのかわからなかった。この男たちが自分に何をしたいのかは明確なのに。 「楽しかったって、綺麗ですねいうてただけやん。」 桜はため息をついた。 人に褒められて嬉しくないはずはない。もっと言って欲しいぐらいだった。ベッドの横にある鏡を見て自分の顔を確かめる。だが、彼女が求めている言葉は、おそらくそれではなかった。 "ブブ" 振動音とメッセージだ。
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