奥さんの想い。

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そしてニコッと微笑まれた。 「謝らないで。 私は、それでいいと思っているの」 「えっ……?」 「睦月は、まだ幼いわ。 これからも母親が必要な時があるし 甘えさせてあげたい。 それに、真夜は……あの性格でしょ? 素直ではないし甘え下手なのよ。 でも、あなたを大切に想っているわ」 沙織さん……。 「あの人は、私の事を忘れられず 苦しんでいる。 まだ若いのに勿体無いわよね。 だって、その気になれば再婚だって いくらでも出来るのに。 あなたとだって……フフッ…」 可笑しそうに笑う彼女。 私は、沙織さんの言葉に驚いた。 嫌ではないのだろうか? だって、大好きな人が 他の女性に盗られるかも知れないのに……。 「嫌ではないのですか? 先生……旦那さんが他の人を盗られるの」 私ならショックで耐えられないだろう。 考えただけでも辛くなるから しかし沙織さんは、 「うーん。確かに辛くないと言ったら 嘘になるかしらね。 でも私は、真夜と睦月の笑顔を守りたい。 真夜……あの人は、苦しみを1人で 背負い込む所があるから 支えてあげられる人が必要なのよ」 「だけど、その私は…もう死んでいる。 だったら、私の役割を誰かに受け継いで欲しい。 あの人の笑顔を守りたいから」 そう話す沙織さん。
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