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高校の同級生で、当時ささいなことで仲たがいし疎遠なままになっていた、舩森唯がいきなり、電話をかけてきた。
卒業アルバムの連絡先として、自宅の電話番号が掲載されていたので、かけてきたそうだ。
当時は個人情報にも寛容だったので、住所も連絡先も、卒業アルバムに掲載するのは当たり前に行われていた。
自意識過剰で、声が大きくて、お金持ちだという「フィクション」を自慢してばかりいた唯。
仲たがいした原因も、「嘘ついてばかり」と私が鼻で笑って、唯を怒らせたためだった。
嘘に嘘を重ねて、取り巻きをつくって、私を孤立させた唯の声は、どんなに時間が経過しても、なつかしさなど抱けない。
用件を問うと、「あんたがしでかしたことは昔話だから、許してあげる。そのかわり相談したいことがあるから、来てくれない?」というものだった。
いきなり電話して、相談したいことがあるとはどういう状況なんだろうと、一応理由を訊ねてみたけれど「来てくれたら話してあげる、嘘はつかないから」という一点張りだった。
なんだか、当時を思い出して急に胡散臭くなり、「話してくれないなら、行かないわ。元気でね」と答えて、電話を切った。
受話器の向こうで、唯がぎゃあぎゃあとわめいていたが、不快でこれ以上は聞きたくなかった。
シャワーを浴び、充電していたスマホの画面を見ると、ラインに新着メッセージが届いていた。
当時から仲良くしてくれた、同級生からだった。
唯が亡くなり、明晩に通夜が行われるとのことだった。
三日前、ひき逃げにあい、搬送された病院でそのまま亡くなったそうだ。
嘘じゃなかったでしょう?
自慢げに、唯が囁く声がした。
通夜には行かなかった。
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