1. 博士課程3年・3月・下旬

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 ファンファーレがホールに鳴り響く頃、僕はニュー・ステラ・ランド・エアポートのカードラウンジにいた。僕が乗る首都のキャピタルシティにあるキャピタル・セントラル・エアポート行きの便の出発が、雪のせいで遅れている。やれやれ、どうやら、折り返しの便の到着が遅れているみたいだ。その間、僕の心の中のほとんどは悲しみに、そして残りのわずかは怒りから構成されていた。それはまるで、何事もなく急に檻から野生に解き放たれて、これからの行き場所を失った、戸惑う「フクロウ」のみたいだった。その心境が、僕の時間感覚を周囲よりもゆっくり流れていると感じさせた。そして、僕のビジネスバッグの中には、その時点では授与されていないはずの、『博士の学位記』が入っている。
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