魔女の処刑台

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 ええっと、話が逸れたけれど。  あたしは生まれついての魔女という自覚があったけれど、自分が本当の魔女になったのはその時ではないのよね。その当時のあたしは、ただの魔女の卵に過ぎなかったから。  あたしが本物の魔女になれたのは――間違いなく、あの人の存在があったからよ。  彼女は、その街に住んでいた誰よりも美しい存在だったわ。そして一目でわかったの、“仲間”だって。彼女は魔女だった。魔女であるがゆえに、強い力を持つがゆえに街の人々に恐れられ、街の外れの大きな屋敷でひっそりと一人暮らしていたのよね。…勿論理不尽だと思ったわよ、どうして彼女のような存在を人間ごときが迫害するのかしらって。でも、同時に思ったわ。人間なんぞと馴れ合うなんて苦痛だもの、離れたところでひっそりと一人暮らした方が彼女も幸せなのかもしれないともね。  人間の誰に冷たい目を向けられようと、恐れられようと、少女だったあたしは全く気に止めることはなかったんだけど。彼女相手だけは違った。生まれて初めて、この人の傍にいたいと思ったのよ。気高く、誰に迫害されてもその美しさを損なわず、凛としていて力強くて――何より、あたしと同じように人間を憎んでいた彼女。彼女が一緒なら、あたしの理想はきっと叶えられると思ったわ。きっと、きっとあたし達二人で、理想の魔女の世界を作るために出会ったのだとそう思ったの。これはきっと、運命に違いないってね。
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