魔女の処刑台

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 そして、あたしは彼女の屋敷に押しかけて弟子入りすることになったわけ。  彼女は“自分なんかと関わってもろくなことにならないから”と最初あたしの弟子入りを断ったのだけど。あたしは絶対にこの人をパートナーにしたいって決めていたから、何度断られても彼女の家を訪ね続けたわ。彼女もきっと、あたしが普通の人間ではないことに気がついたのね。いつの間にか断ることもなく、あたしが彼女の研究を手伝うことも止めなくなっていったのよ。  彼女の研究。それは、偉大な魔法の開発よ。そう、魔法も研究しなければ新しいものは生まれないの。そこは科学と一緒よね。あたしは彼女のその探究心にとても惹かれたわ。何より、その研究の内容が気に入ったの。彼女は、時間を巻き戻すための魔法を開発しようとしていたのよね。時を操る魔法――魔法であっても、本当に難しいものなのよ。魔法は理論上はどんな夢だって叶えることができる技術だけれど、大きな目的であればあるほど要求される対価が莫大になっていくのよね。魔力だけでどうにかできる範囲の魔法なんてたかが知れているわ。それこそ、時間を巻き戻す魔法なんてものは、本人の命を対価にしてさえも足らないくらい、莫大なエネルギーが要求されるのよ。  でも、あたし達は最終的に魔女の世界の頂点に立って皆を導かないといけないのに、死んでしまったらお話にならないじゃない?  だからこそ、対価が少なくてもやりくりできる時魔法を、どうにかして発明する必要があったのよね。時の魔法の威力は絶大よ。どれほど強大な敵であっても、産まれる前まで時間を巻き戻されてしまったら跡形もなく消滅してしまうもの。この魔法が形になれば、人類全てを滅亡させることも夢ではないわ。時を自在に操り、あたしたちだけの世界を作る。その日を夢みて、あたしは彼女の研究を手伝い続けていたのよね。
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