魔女の処刑台

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 でも、ね。  ある日、あたしは真実を知ってしまったの。  彼女の家で紅茶を飲みながらあたしは尋ねたわ。どうして時の魔法の研究を始めたのって。そのきっかけになった出来事があれば教えて欲しいって。  まあ疑問にも思うわよね。時の魔法はとても強力だけれど、研究がとても難しくって時間がかかることは目に見えていたもの。  すると、彼女はとんでもないことを言ってきたのよ。 「私は、かつて人間だったのです。ある日呪いを受けて魔女になってしまった私を、私の愛する人は手を引いて連れ出してくれました。世界を敵に回しても、私の未来を守りたいと…私と共に生きていきたいと、そう彼は言ってくれたのです」  耳を、疑ったわ。  彼女がまさか、元々人間だった?  それも、人間の恋人がいた、ですって? 「辛い、逃避行。それでも彼がいれば私はそれだけで幸せでした。それ以上に、欲しいものなんて何もなかったのです。彼が、追いかけてきた国の者達に…蜂の巣にされて殺される時が来るまでは」  聞きたくないと思った。  その先が、簡単に予想できてしまったから。 「私は、あの時間をやり直したい。彼の命を救いたいのです。あの時私が選択を間違えなければ、彼の手を取らなければ…きっとあの人はあんな殺され方をしなくても済んだはずなのに。私の愛が、あの人を殺してしまったのですよ」
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