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第五話「再会」
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翌日。
いちかが目を覚ますと、ベッドの端にレイが座っていた。
あれからずっと話し込み、ハンクに夜食を運んでもらって、その後もずっとこの部屋にいたいちかは、レイの「僕は寝ないから、良ければここのベッドを使うといい」という言葉に甘え、そのまま会話をしながら眠ってしまった。
その事実を思い出し、他人のベッドで意外なほど熟睡した自分に驚きながら、いちかは赤い顔で部屋の主を見上げた。
「おはよう」
目覚めたいちかを見下ろして、レイは彼女の額に柔らかなキスを落とした。
今、彼がいちかを見る目はとても優しくて、愛情といたわりに満ちている。
男性からそんな眼差しを注がれたことも、こんなにストレートな愛情表現をされたこともないいちかは、どう反応すれば良いのか分からず、「おはよう」と挨拶を返すのが精一杯だった。
彼がこんなに自分に優しいのは、自分が元恋人の生まれ変わりだから、というのが理由だが、今のいちかはただ、セシリアでなくても良いと言ってもらえた、その事実を喜んでいた。
昨日の間に、レイはいちかの質問に全て答えてくれた。
人類の文明が興った時代から存在する、ヴァンパイアという存在のこと。
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