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結局のところ、ぼくには、「立派な大人」として生きることなど、出来ませんでした。
私立の中学・高校への進学、有名大学への進学、海外留学、そして、一般企業への就職。
ぼくはこれまで、「立派な大人」なるためのレールに乗せてもらい、物質的には何不自由なく、恵まれた、豊かな人生を歩ませてもらいました。でもそれはあくまで、お父さん、お母さん、あなた達に「させてもらった」ことです。あるいは、「させられた」ことです(ごめんなさい)。ぼくは、二人の愛に甘え、二人の財力に甘え、何も自分で考えることなく、ぼんやりとレールの上を歩いてきました。でも、心の中は常に空っぽだった。将来の希望に心から燃えたり、何かに心から打ち込みたいと思うことなど、一度たりともありませんでした。
ただ、心の中で、「これで良いのだろうか」と思うことは、何度もありました。そんな疑問を抱くことが、ぼくには不思議でもありました。だって、自分が歩ませてもらっている人生は、「立派な大人」になるための手順そのものだったのですから。「『立派な大人』になれば、そこには幸せが待っている」、そう根拠もなく信じていたぼくには、なぜ、自分が自分の人生に疑問を抱くのか、それが分からなかったのです。
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