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人が移り住むまでは、鼠を獲って過ごすが 人が多くなると、また他の人里へ移動する。 幾度か、伴天連なども見た。 同じ人なのであろうが、身体が大きくある。 眼の色や毛の色まで違う者もおり 肌などは極めて白い。 話し言葉なども違うものであった。 俺は何か、その者等に近しきものを感じた。 黒毛であるのに、おかしなものよ。 近付きなどは せぬが。 異国の神の教えなどを広めておるというが この頃は、布教の禁止を言い渡されたものであるようだ。 俺には わからぬ。別に良かろうよ。 その異国神も、神仏も 何もせぬのであるから。 山を駆ける。 まだ夕暮れを越えたばかりの浅き夜の間に。 気を付けてはおっても、森の中では 何かに すれ違うたりするもので 「今のは?」と、同種の呟きが聞こえた。 「狼ではなかろうか?」などと。 お前達の鼻は利かぬものと みえる。 眼に映るものには、簡単に騙されるものよのう。 人世は また、戦などが興った。 天下分け目などと聞く。懲りぬものよ。 だが、(いささか)か困るのは 人里の者等も戦の戦力として取られ 米や野菜なども、兵糧などと称して持って行かれる故、鼠も減るのだ。 そういった時は、人は山にも盛んに分け入る。 山菜などが目当てではあるが 同じ獲物の兎や、川の魚なども持って行く。 人であれば、敵わぬ故 仕方あるまいと 山の者等は目を瞑るが その山に 縄張りを持たぬ俺には、そういう訳にもいかぬ。普段より追われる者となる。 いつもより、より人里で盗みを働くことになるが 見つかれば “厄獣” と、殺意を向けられる。
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