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******** 「名は何というのだ?」 「榊じゃ」 団子を食うと言うので、茶屋に来ておる。 よく食う童のようで、三皿目じゃ。 「一人で何をしておるのだ? 道中を見ておったことは知っておる。 親などは?」 蓬が聞くと、童... 榊は「死した」と答えた。 「罠に掛かったのじゃ」 「童、我等が狐と わかっておるのか?」 「榊じゃ。童ではない。もう七つである故。 わかっておる。匂う故。 見ようと思えば、元の姿も見える」 「犬ではあるまいな?」と、俺に聞く。 「匂うであろう?」と答えるよりない。 「七つ? いつから人化けしておる? 何故、童に化ける?」 「もう 二年になるの。まだ耳か尾が出る故 尾の時は、このように着物の中じゃ。 耳の時は 髪を結う。何故 童なのかはわからぬ」 榊は着物をたくしあげた。 「やめよ。しまうが良い」 羊歯がため息をつき 蓬が手拭いを榊の膝に掛けた。 「一人で山におるのか?」 「山は降りた。縄張りは取られた故。 この辺りで暮らしておる。 怖いことがないし、食べ物も豊富にある」 榊は 鼠狩りもするが、スリなどをして その日暮らしをしておるものらしい。 「どこで寝ておるのだ?」 「ついて参れ」
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