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絵巻を絵師などから買い、物書きから書物を買う。 浮世絵なども土産に買うた。 しかし、今日は蒸すのう。 「湯屋などに行くか」 湯屋とは、銭湯のことじゃ。 この時分は まだ、家に風呂など無い故 人等は皆 湯屋へ行っておった。 しかし、湯屋は どこも混浴じゃ。 「川などに入れば良かろう」 「山であればの。このような場の川に 狐などが入れば、捕らえられるであろ」 確かに目立つ。 夜であっても人が歩いておるし。 「すっきりとしてくるかの。 榊、どこぞで待っておれ」 「儂も行く。今日 出ておるのは 耳である故」 榊は結った頭を指差す。 この時分は、ならぬ とは言えぬであった。 それが当たり前の時分であった故。 今では考えられぬことだが。 「仕方あるまいのう」と、湯屋へ行く。 手拭いなどは借りれるが 女の洗髪はならぬであった。 水をたくさん使う故。 皆、髪は結ったまま入る。 俺も髪を括り、手拭いを頭に巻く。 番台に金を払うと、服を脱ぎ、籠に入れる。 結界を張った故、物取りには合わぬ。 榊は、何も気にせずで良い身体付きにあるが 些か痩せすぎておる。独りで生きておったからのう。 脱衣所から、湯船の石榴口まで仕切りはない。 広い 一部屋のようなものじゃ。 まず湯に じっくり浸かる。 汚くあるが、気にしてはならぬ。 これから洗う故。
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