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******** さて、連れて帰ったは良いが これは大変な跳ねっ返りであった。 俺が勧めた修行は術であるのに 術だけでなく、武の修行もすると聞かぬ。 「まず、里の武の者からじゃ」と言うても 俺が稽古をつけろと言う。 「俺は 教えるのは向かん」 「ならば勝負じゃ」 「うむ、かかって参れ」 榊は 棒を持って跳ぶが、素手で棒ごと横に払う。 「今 一度!」 涙目ではないか。痛かったものか。 すまぬ と思うが 言うと またかかってくる故、それは言わぬ。 「俺はこれから、書物を読む故」 屋敷で昼寝をしておると 「榊がおらぬ!」と、藤が騒ぐ。 「術の鍛練の時間であるのに、里におらぬ! 吾は四山から来ておるというのに!」 藤は、四の山の山神となった。 わざわざ、才覚ある榊に術を教えに来たようだ。 しかし 榊がおらぬ。まったくのう... 皆で山中探しておると、猫などを抱いて ひょっこり帰って来た。 「何処に行っておったのじゃ!」 藤は怒ると恐ろしくある。 「む...  麓じゃ... 」 「ほう、猫又ではないか。 これは霊力が高くあろう」 榊の胸の猫を見て、芙蓉が言う。 新緑色の眼。三毛の二つ尾じゃ。 「露さんというのじゃ。招かれた故」 玄翁が、露さんが里に入れるよう 許可を出す。 「これでいつでも遊びに来れる。 里で招きの講師をしていただこうかの。 榊。まだ里の外には慣れておらぬのであるから もう 一人では出てはならぬ」 玄翁は榊に甘くある。 孫娘などが出来た気分のようじゃ。 「露さん、里を案内する故。 浅黄、共に参れ」 断れば「何故?」と拗ねる故 座敷を立ち上がる。 「術は どうするのじゃ?! 狐火も まだであろう?」 「夜する故。藤も 露さんから招きを習うと良い」 「露さん、行こう」と駆けて行き 振り向いて「浅黄!」と呼んだ。敵わぬのう。
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