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「浅黄。怒っておろうか?」
「怒っておらぬ」
泣きたくある。
山頂を出ると、人里は夜じゃ。
そのため、里の昼に練習しておったものか...
いや... 色香は術の 一つであり
好ましく想う者との それとは違う。
わかってはおるのだ。
だが...
山頂から北斗七星を仰ぐ。
胸が ひりひりする。聞きとうなかった。
「もう せぬ」
「尾が割れるまで、やれば良かろう」
自棄じゃ。知らぬ。
「せぬ!」
何故 俺が お前に怒鳴られたものか。
「儂は、お前のようになりたくある。
武ではなれぬ。術でじゃ。
有事の際も、隣におりたい故」
可愛くある。だが、まだ腹の虫が治まらぬ。
「有事などなかろう。
あっても、お前は里じゃ」
「儂を、独りにすると言うか?」
北斗七星から、眼を移す。泣いておる。
「いいや。せぬ」
抱くことも 許されまいか。
「お前は俺の、妹である故」
兄ならば、妹などを 抱かぬものであろう。
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