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「俺はボティスだ。お前、浅黄だろ?」 「うむ... 」 里に用事であろうか? 「時間はあるか?」 「なくはないが... 」 ボティスは自転車に眼を止めた。 「それに乗ろうとしていたのか?」 「うむ、そうだが... 」 「ならいい。乗って来い」 そう言われても、何か 行きにくくある。 「里に用事などがあろうか?」と 聞くと 「いや」と、答える。 ならば、何をしていようか? と、また聞くと 「お前を待っていた。二日だ」などと言うた。 「何? どういう事じゃ? 会うたこともなかろう?」 「だが見掛けた。泰河等と食事に行っただろ? 俺は奴等を見張っているからな。 うるさいクソガキと祓魔もだ」 ならば、ここで待たずに 泰河等を通して、俺を呼べば良いものを。 「して、何用じゃ?」 「お前と話がしたい」 暫し黙る。意味がわからぬ。 「何の話を?」 「いろいろだ。だが、お前は それに乗る と言う。 乗ってこい。日を改める。明日は どうだ?」 「もう良い。乗る気が削げた。話すが良い」 ボティスとやらは、片眉を上げた。 「ふん。では、その辺りに座れ」と 右手を上にして広げると、手に葡萄酒の瓶が乗った。木上に置いていたものと見える。 俺が自転車の前に胡座(あぐら)をかくと ボティスも俺の向かいに胡座をかいた。 葡萄酒の栓を 指で弾いて抜き、俺に渡すと また手を開き、別の葡萄酒を乗せる。 それも指で弾いて栓を抜くと 自分で 一口飲んだ。 「飲め。フランスだ」 一口飲み「おっ」と口に出る。 「旨い」と 言うと ボティスは「そうか」と笑うた。
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